「見た目がシンプルでかっこいい」
「メンテナンスが楽そう」
――そんな理由でシングルスピードバイクに興味を持つ人は少なくありません。確かに、変速機がないぶん構造は軽く、街中を颯爽と走るにはピッタリな一台です。
しかし、ちょっと待ってください。
SNSやレビューサイトには「シングルスピードにして後悔した…」という声もちらほら。なぜ、憧れのはずだったシングルスピードが“乗らなくなった自転車”になってしまうのでしょうか?
この記事では、私自身の失敗談や実体験を交えながら、「後悔しがちな5つの落とし穴」を徹底解説。さらに、失敗しないための選び方や、おすすめモデルも紹介します。
これから購入やカスタムを考えている方は、読み終える頃には「自分に合うかどうか」がしっかり見えてくるはずです。
シングルスピードとは?人気の理由と基本スペック
「シングルスピード(Single Speed)」とは、その名の通り変速機を持たない単一ギアの自転車のことです。ギアチェンジができないため、常に一定のギア比でペダルを回すスタイルとなります。
シンプルだから軽い、壊れにくい
最大の特徴は、構造がシンプルで軽量なこと。変速機やディレイラー、シフトレバーといったパーツが不要なため、メンテナンスがとにかく楽。チェーンの張りを調整する程度で日常の整備は完結します。
そのシンプルさゆえに、見た目もすっきりと美しいデザインが多く、ファッション感覚で選ぶ人も増えています。とくに都市部では、スマートに街を流す「シングルスピード通勤スタイル」が一種のトレンドにすらなっています。

「ピスト」との違いって何?
よく混同されがちなのが、「ピストバイク(フィクスドギア)」との違い。ピストは後輪が固定されており、ペダルを止めるとタイヤも止まるという構造です。つまり「足を止めたら惰性で進まない」というやや特殊な乗り味になります。
一方で、シングルスピードはフリーギア(空転可能)タイプが主流。ペダルを止めても後輪は回り続けるため、通常の自転車と同じ感覚で乗ることができます。
✅ポイント:
ピスト=競輪仕様・トリック向け、
シングルスピード=街乗りや通勤向け。
街乗りで人気の理由とは?
- 軽量でスタートダッシュが速い
- チェーン落ちや変速トラブルがない
- パーツが少ないから価格も手頃
このように、通勤・通学・カフェ巡りなど、20km圏内の街乗りには最適なジャンルといえるでしょう。
【後悔1】坂道で絶望する?ギアなしの限界
シングルスピードを語る上で避けて通れないのが、「坂道問題」です。ギアが1枚しかないこのバイクでは、地形の変化に合わせたペダルの軽重調整ができません。つまり――坂が来たら、全部“筋力で押し切る”しかないのです。
フリーギアでもしんどい理由
「固定ギアじゃないから大丈夫でしょ?」と思う方もいるかもしれませんが、フリーギアのシングルスピードでも坂道のつらさは変わりません。なぜなら、ギア比そのものが変えられないからです。
たとえば、平地でちょうどいいギア比(例:2.8〜3.0)に設定されていた場合、坂ではそのギアが一気に「激重」になります。立ち漕ぎしても進まない、脚がパンパンに張る――そんな経験をした人も多いはず。
実体験:通勤ルートに1つでも坂があるなら要注意!
筆者もかつて、Giant Escape R3をシングルスピード化した経験があります。当時の職場までの距離は片道8km。大部分はフラットだったのですが、最後に「心臓破りの高架橋」が1本。
この1本が、地獄でした。ギア比を軽めに設定しても、平地では回転数が上がりすぎて疲れるし、坂では踏んでも踏んでも進まない。結局2週間でギブアップし、フロント多段化して逃げました。
「坂道は押せばいい」は正解か?
確かに、坂道があれば降りて押すという手段もあります。でも、それって毎日の通勤でやりますか?荷物があったり、雨の日だったり、スーツだったり――現実はもっと厳しいんですよね。
✅まとめ:
「坂が少しでもあるなら、変速付きのバイクを選ぶ」
これが筆者の経験からくる結論です。
【後悔2】スピードが出ない?クロスバイクとの違いに愕然
シングルスピードは軽くてスイスイ走れる――そう思っていませんか?
たしかに車体は軽いですが、実は長距離や高速巡航には意外と向いていません。その理由は「ギア比固定」という構造にあります。
クロスバイクとの決定的な違い
クロスバイクは変速があることで、加速・巡航・登坂のすべてに最適なギアを選べるのが強み。対して、シングルスピードはスタートも巡航も上りも全部“1枚のギア”で対応しなければなりません。
つまり、スタートは軽く、巡航では重くしたい…というごく自然な要望に応えられないわけです。
たとえば、私が以前テストした以下の2台:
- 【クロスバイク】Giant Escape R3(変速付き):巡航30〜33km/h
- 【シングルスピード化】Giant Escape R3改:巡航23〜26km/h
同じ車体で、平均時速はおよそ5〜7km/hの差。体感でいうと「前に進まないな…」というもどかしさが常にあります。
「速そうに見える」の罠
ピストバイクに代表されるシングルスピードは、見た目がシャープでスポーティ。フレームが細く、タイヤもスリック、まるでロードバイクのようです。
しかし、速く走るには「脚力 × ギア比 × 空気抵抗」のバランスが不可欠。シングルスピードはその中でギア比が固定されているため、巡航速度を引き上げるには相当な脚力が必要になります。
結果、乗り始めてしばらくしてから「思ったほどスピード出ないな…」という後悔が出てくることも。
✅ポイント:
「通勤を速くしたい」「30km/h巡航したい」なら、
シングルスピードは不向き。クロスやロードが無難です。
【後悔3】シングルスピード化での失敗
「今あるクロスバイクをシングルスピード化すれば安上がりだし、見た目もスッキリしてカッコよくなるかも!」――そう思って、シングルスピード化を試す人は多いです。ですが、実際にやってみると予想以上に大変。
よくある失敗1:パーツが合わない
筆者がGiant Escape R3で試したときもそうでしたが、エンド幅やハブの形状が合わず、ポン付けできないことが多いです。特に後輪周りはセンター出しが難しく、チェーンラインのズレで異音やチェーン落ちが頻発するケースもあります。
例:エンドが135mmのMTB系フレームに、120mmのSS用ハブを無理やり入れようとして断念…
よくある失敗2:結局高くつく
「1,500円くらいで売ってる変換スペーサーでOK」と思っていたら、工具代や追加パーツで1万円超えになることも。特に以下のようなアイテムは後から必要になることが多いです。
- トラックエンド対応ナット(フレームにより加工も必要)
- シングル用チェーン
結果、「だったら最初から完成車買えばよかった…」と後悔。
よくある失敗3:見た目が“やっつけ感”に…
どうしても「もともと多段ギアだったフレームに無理やり詰め込んだ感」が出てしまうのも事実。スプロケットのスペーサーが目立ち、バランスも悪くなることがあります。
また、クランクとのギア比も合わず、ペダリングが妙に重い/軽すぎるという違和感も生まれます。
✅ポイント:
完成車なら最初から設計バランスが取れている。
カスタムは知識・工具・コストを把握してから慎重に!
【後悔4】「フリーギアはダサい?」という謎の風潮に戸惑う
シングルスピードに乗り始めたとき、SNSや街の声でよく聞くのがこのセリフ――
「あ、フリーギアなんだ。ピストじゃないんだね(笑)」
……え?フリーギアってダサいの?
そんな疑問を抱いたことがある方、意外と多いんじゃないでしょうか。
ピスト文化と“こだわり”の衝突
そもそも「ダサい」と言われる背景には、ピスト(固定ギア)にこだわるカルチャーがあります。トリックやスキッド、メッセンジャースタイルなど、スタイルを極めた人たちにとって、フリーギアは“逃げ”の選択肢に見えてしまうのかもしれません。
しかし、現実的に考えてみてください。
- 信号が多い日本の街中
- 坂道や下り坂がある通勤ルート
- トリックをやるわけでもない日常使用
そんな環境で「固定ギアにしなきゃダサい」という価値観、ちょっとズレてませんか?
「自分に合う乗り方」が正解
筆者は固定ギアもフリーギアも両方乗ってきましたが、街乗りや日常利用には圧倒的にフリーギアが楽です。ペダルを止めて流す感覚、下り坂でのブレーキのしやすさ、信号待ちでの安心感――すべてが日常向き。
それを「ダサい」と一蹴するような意見に惑わされる必要はまったくありません。
✅「カッコよさ」は、バイクそのものではなく“自分の乗り方”に宿る。
SNSの声は声であって、正解じゃない
SNSではとにかく「尖った声」が目立ちます。でも、それが多数派でも正解でもありません。
あなたの使い方にマッチするかどうかが、最優先すべき判断基準です。
✅ポイント:
フリーギアが“ダサい”なんて誰が決めた?
楽しく、安全に、かっこよく乗れてこそ「正解」です。
【後悔5】結局あさひでよかった?完成車とカスタムの比較
「シングルスピードに興味があるけど、完成車を買うか、それとも自分でカスタムするか…」
この2択で迷う人、実はとても多いです。そしてその中には、あさひで完成車を買っておけばよかった…と後悔する人も多数。
では、なぜそんなことが起こるのでしょうか?
あさひの完成車が選ばれる理由
シングルスピードの完成車として人気があるのが、FUJIのシングルスピードバイク。サイクルベースあさひでも買えます。見た目はシンプルでスタイリッシュ、価格も7万円台からと手頃です。
そのうえ、
- 防犯登録や整備が最初から完了している
- 実店舗で試乗や調整が可能
- 初期不良や不具合に対応してもらえる
といったサポート面の安心感があります。
自分でカスタムする場合の落とし穴
対して、既存のクロスバイクなどをシングルスピード化する場合は、前述のように
- パーツの互換性確認が必要
- 工具の購入と整備スキルが必要
- コストが結果的に高くつく
という問題が立ちはだかります。しかも、見た目は良くても機能が破綻しているケースも少なくありません。
例:筆者がSS化したクロスバイクは、見た目はクールでしたがチェーンテンションが安定せず毎週再調整…
「シンプルに乗りたい」なら完成車でOK
もしあなたが、
- 見た目が好み
- 通勤・通学・街乗りがメイン
- トリックやスキッドには興味なし
という使い方を想定しているなら、最初からあさひなどで完成車を購入するのが正解です。
✅ポイント:
「自分だけの一台を作りたい」ならカスタム、
「手軽に失敗なく始めたい」なら完成車一択です。
シングルスピードに向いている人・向いていない人
【診断チャートあり】
「見た目はカッコいいけど、自分に合ってるのかどうか分からない」――
そんな悩みを抱えるあなたのために、シングルスピードが“ハマる人”と“後悔する人”の違いを整理しました。
自転車選びで失敗しないために、まずは以下の簡単診断チャートを使ってみましょう。
✅シングルスピード適性診断チャート
以下の質問に「はい」か「いいえ」で答えてください。
質問 | はい | いいえ |
---|---|---|
通勤・通学はほぼ平坦な道が中心ですか? | □ | □ |
片道の走行距離は10km以内ですか? | □ | □ |
スピードよりもスタイルや見た目を重視しますか? | □ | □ |
ギア調整やメカトラブルに煩わされたくないですか? | □ | □ |
荷物はリュック1つ程度、軽装ですか? | □ | □ |
→ 「はい」が3つ以上なら、あなたはシングルスピード向き!
向いている人の特徴
- シンプルなデザインやミニマル思考が好き
- 平坦な街中を移動手段として使いたい
- 「ギアは1つで十分」と割り切れるタイプ
- 休日のカフェ巡りやシティライドが主目的
→ こうした人は、シングルスピードの軽快さや手軽さにハマりやすく、後悔も少ないです。
向いていない人の特徴
- 坂道が多いルートを使う
- 20km以上の距離を高速巡航したい
- 荷物が多い・チャイルドシートを使う
- 自転車に“実用性”を強く求める
→ こうした人には、変速機付きのクロスバイクやeバイクの方が圧倒的に快適。
無理にシングルスピードにすると、毎日の移動が苦行になる可能性も。
✅ポイント:
自転車選びは、スペックよりも「使い方」と「目的」で考えるのが鉄則です。
後悔しないシングルスピードの選び方|おすすめ3モデル
「自分に合うことは分かったけど、実際どのモデルを選べばいいの?」
そんな方のために、初心者にも扱いやすく、満足度の高いシングルスピードバイクを厳選して3つご紹介します。すべて実績あり・入手性あり・メンテも安心のラインナップです。
🚲① サイクルベースあさひ シングルスピード
- 価格帯:約50,000円〜
- 特徴:必要十分な装備・軽量フレーム・全国サポート
- おすすめポイント:初めてのシングルスピードにぴったり。整備済みで届くので、そのまま乗れる安心感は大きい。
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🚲② VINTAGE PISTA
- 価格帯:本体約97,000円
- 特徴:シングルスピードバイクの定番。
- おすすめポイント:街中でも扱いやすい44T×16Tのギヤ比でストップ&ゴーも軽快。スマートでお洒落なクロモリシングルスピードです。
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🚲③ LEADER 721TR【スタイリッシュで速いピスト系】
- 価格帯:約120,000円〜
- 特徴:アルミフレーム、トラックジオメトリ、固定/フリー両対応
- おすすめポイント:街乗りピストの代表格。見た目の美しさとスピード感を両立したい人向け。
✅注意:固定ギア前提で設計されているため、初期状態はピスト寄り。街乗りならフリーギアがおすすめ
【選び方のコツ】
- 坂があるなら:軽量フレーム + フリーギア必須
- デザイン重視なら:ピスト系でシンプルに仕上げる
- 日常使いメインなら:完成車でトラブルを避ける
✅ポイント:
「どんな道を、どれくらい走るか?」を基準にモデルを選べば、
シングルスピードでも後悔のない買い物になります!
まとめ:「シングルスピード 後悔」を防ぐ3つの鉄則
ここまで読んで、「やっぱりシングルスピードって難しそう…」と思ったかもしれません。
でも安心してください。正しく選べば、最高にクールで楽しい相棒になるのがシングルスピードです。
そのために、最後にもう一度だけ、後悔しないための3つの鉄則をお伝えします。
✅鉄則①:実用性とスタイルのバランスを見極める
- 見た目のカッコよさに惹かれても、通勤や日常使いに耐えられなければ本末転倒。
- 坂道が多いなら、変速付きバイクを再検討。
✅鉄則②:「完成車」か「カスタム」かを慎重に選ぶ
- 工具や整備スキルがないなら、完成車でスタートするのが無難。
- カスタム派は、パーツ互換やチェーンラインの基礎知識をきちんと学ぼう。
✅鉄則③:「他人の意見」より「自分の使い方」で選ぶ
- フリーギアがダサい?
- ピストじゃないと本物じゃない?
- そんな声に惑わされず、自分にとって楽しく乗れる一台を選ぶのがベストです。
✨シングルスピードは“道具”であり、“表現”でもある
坂道や速度、見た目やカルチャー…いろんな議論があるのがシングルスピードの面白さです。
けれど、最終的にそれを乗るのはあなただけ。あなたの一台を、あなたらしく楽しんでください。